06.14
指導とパワハラの境界線、意識していますか?
新卒で採用されて早2ヶ月。この時期の新人は、急激なスピードで仕事について、そして、社会人としての知識を吸収していきます。
しかし、まだ慣れていないからこそ、ミスや間違いはどうしても起こってしまうもの。それを正しい方向に導くのが先輩であり、上司の役目です。
ところが、最近は“部下に少し厳しく指導したところ、次の日から出勤してこなくなってしまった”という嘆きも聞こえてくるようになりました。上司としては、本人の成長のため良かれと思って叱ったことなのですが…
「自分が社会人になりたての頃は、少し厳しく指導されたとしてもそれを成長の糧としていたのに」という思いの上司と、「どうして、私だけこんなに言われなくてはならないの?」と悩む部下。
時代や環境によっては、指導もパワーハラスメントと捉えられてくることが珍しくなくなってきました。
−ある日、突然来なくなった職員–
看護師長だった彼女は、強い責任感があり仕事もできる、いわゆるキャリアウーマンタイプです。看護師という女性が多い職場ではありますが、男性の医師や他の医療技術職の方達とも対等に渡り合えるくらい仕事への熱量があります。
もちろん、彼女が入職したての頃は、先輩や上司に何度も叱られ泣いたことも数知れず。でも、だからこそ今の自分があるのだと信じています。
そのため、自分がこれまで受けてきた指導や教育を部下にも施して、早く成長して欲しいと願っています。
しかし、同じ仕事を割り振ったとしても、みんなが同じペースでできるわけではありません。もちろん、彼女のところにも仕事を覚えるのに時間がかかる部下が一人いました。
その部下は、比較的大人しいタイプであり、看護師長である彼女の指導にも素直に「はい」と従っていました。
しかし、ある日突然、出勤して来なくなったのです。
もちろん、欠席の連絡もなく電話にも出ないので、心配になった彼女が自宅を訪問しても応答はなし。そういった状態が数日続きました。
そして、しばらくしてからなんと、その部下の実家から連絡があったのです。「もう、この仕事を続けられないのでやめたい」とのこと。突然のことだったので、彼女はびっくりしてしまいました。
本人のためにと行った指導ですが、部下は強いストレスとして感じていたようです。
今回のケースはそうではありませんでしたが、最近では、指導を受けた側にとってはパワハラだと感じてしまうことも少なくありません。
近年の傾向を受け、厚生労働省では職場のパワーハラスメントについて次のように定義しています。
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
暴力を振るうなんてもってのほかですが、指導をする側も受ける側も気持ちよく仕事ができるようにするためには、言葉の使い方や職場での人間関係にも配慮する必要があります。
ここでは、2つにポイントを絞り、その対応について考えてみます。
日頃から、コミュニケーションは取れていますか?
セクハラもそうですが、パワハラも「誰が」「どのように」ということが一番の鍵になってきます。
例えば、普段からコミュニケーションを取っている先輩後輩の間柄では多少、乱暴な言葉だったとしても許されることがあります。
職場ですので、プライベートの詮索や私語は慎むべきですが、日頃の挨拶や声かけ、仕事や体調を気遣う言葉や態度は、積極的にしてもいいのではないでしょうか。
指導や教育内容を記録していますか?
指導内容や注意した事柄を記録に残すことで、客観的に捉えることができます。また、他の上司からみて、行き過ぎた行為ではないかチェックすることもできます。
場合によっては、面談を通じて本人と内容について共有し、改善点を模索することでより良いコミュニケーションが生まれることもあるかも知れません。
どんな立場であってもお互いに尊重し、成長していける職場にするために出来ることから取り組んでいきたいですね。
執筆者:原麻衣子(MAIKO HARA)
医療の人事ドットコム編集長。
これまで、MR(医薬情報担当者)経験を経て、地方病院における人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当してきました。現在は、クリニックにおけるWebコンテンツの制作や企画プロデュースに携わっています。
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