01.22
三方よしとなるリフィル処方箋の未来とは?
2022年1月現在、オミクロン株が猛威を振るっている中ですが、4月からの診療報酬改定に向けて情報が耳に入ります。その中で大きく話題となっているのが、一定期間、医師の管理のもと医療機関を受診しなくても繰り返し使用できる処方箋『リフィル処方箋』の導入ではないでしょうか?
記事によると、諸外国では当たり前のように行われていることもあり、日本の導入に向けて、財源を捻出する手段として財務省主導で決まった側面が強く、これを受け厚生労働省は、現在急ピッチで具体的な制度設計を進めているようです。
医師側からは、
・長期処方が増えることによる管理上のリスク
・受診頻度減による収益低下
など、特にクリニック経営への影響を考える声が多くあります。
薬剤師側からは
・薬剤師の職能を活かせると同時に責任が問われる
・立地依存からの変化が起こる
など、薬局経営にも大きく変化をもたらす可能性を示唆しています。
今回は、現状を踏まえてクリニック、薬局、そして患者の3者の目線で考えてみようと思います。
①クリニック医師から考えるリフィル処方箋
上記の声にあるように、クリニックの院長からは肯定的な声は少ないように感じます。「病状が安定している患者」が対象になるとのことですが、クリニックにとって何かしらのインセンティブがなければリフィル処方箋の活用は実際のところ、伸びないのではないでしょうか。
そこで予想できるのが先ずは急性期病院の外来です。病診連携が進み、病状が落ち着いた患者はかかりつけ医へ逆紹介されていますが、薬局でも感じることは患者が病院受診を希望していることも多いです。大病院で診てもらうことに安心感を感じるのでしょう。実際、病院の処方箋は安定している患者では長期処方がメインです。病院医師にとってもリフィル処方箋は、外来対応が減り、入院患者へ時間を使えることになれば大きなメリットになるはずです。
②薬局薬剤師から考えるリフィル処方箋
今までも「分割調剤」という、例えば90日の処方箋を30日×3回で対応するといった仕組みは存在しました。しかし、「病態が安定している」というより粉砕調剤した薬の安定性のため、30日おきに調剤して渡すといった薬学的観点での対応でした。反面、リフィル処方箋の対応は薬学的知識とともに患者、医師から信頼される人間力と瞬間的に対応する判断力が問われてきます。当たり前ですが、ある程度、臨床での薬剤師経験を持つことや研修認定を受けた者等何かしらの線引きも重要になるかと思います。
また薬局経営の観点からすると、今までクリニックの門前だからと来ていた患者がリフィルの2回目、3回目となると自宅や仕事先の近隣のように他の薬局へ行く可能性も大きくなります。患者導線が変わり、今後オンライン服薬指導がどのように絡むようになっていくのかが非常に興味深いところです。
③患者から考えるリフィル処方箋
患者にとっては利便性という点で大きな変化となります。しかし現状でも長期処方で安定している患者では約3か月(90日)処方の方も見かけます。リフィル処方箋で30日おきに薬局へ行かなくてはいけなくなると、利便性が悪くなったと感じてしまいます。もちろん自分の体のためですが薬局の対応がメリットに感じれないと不満の声がでる可能性もあります。医療は患者側が受け身になりがちですが、しっかりと制度設計をして患者理解も高めていく必要がありそうです。
「電子処方箋」、「オンライン診療/服薬指導」、「リフィル処方箋」この3つが今後どのように患者にとって利便性・安全性の両軸を補完するものになっていくのでしょうか。私が感じるのはクリニックと薬局の連携なしには物事はうまく進まないかと思われます。「三方よし」となる医療制度の未来に向けて大きく変化が起ころうとしています。
執筆者:加納 裕介
MRファーマスト運営者。
『独立する薬局薬剤師の経営力を伸ばし地域を幸せにする』 という理念のもと
独立開局成功塾という0から薬局経営と起業スキルを身に着けれる少人数制起業塾を運営。元MRの薬局経営者。医師と連携を密にとり地域医療にも邁進中。
旅行好きで余暇ができると宮古島に行き人と自然に癒されている。
MRファーマシスト
http://k-pharma.co.jp/mr-pharmacist/
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。