2020
11.09

「他業種からのスタッフ採用するときは丁寧な説明を」

採用・退職

9月ごろから人材紹介会社や求人広告会社から連絡をいただくことが増えてきました。コロナ禍前ですと、月に2〜3件だった問い合わせが、今は倍以上になっています。何事かと思い各社に聞いてみると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で失業や休業の人たちが医療事務を希望するなど、人の動きが出てきているとのことでした。実際に自分がよく訪問するクリニックでも、他業種出身の方を採用したという話がありました。他業種で経験したことをクリニックで活かしてくれることで、長年クリニック勤務をしているスタッフによい刺激になり、さらに患者対応もよくなっていくと言う期待ができます。

先日、経営サポートをしているクリニックでも増員に伴う求人募集をしたところ、たくさんの応募がありました。その中でご縁があり来てもらうことになった方も他業種から医療事務を希望した方です。

このクリニックでは定期的に私とスタッフとの間で個別ミーティングを実施しているのですが、先日この新しく採用した医療事務の方からこんな質問がありました。

「このクリニックでは祝日がある月は給料が少なくなるんでしょうか?」という内容でした。「祝日のある月にいつもと同じくらいの給料をもらうには、いつもより時間外勤務が必要になるんでしょうか?」とのことでした。

このクリニックでは医療業界以外の方にはなじみが少ない変形労働時間制を採用しています。先輩スタッフとの雑談の中で話を聞いたことからのようでした。クリニックと新規採用スタッフとの間で雇用契約書を交わす時に、クリニック側から変形労働制の説明をしてもらっていますが、スタッフには理解されていないケースがあります。ご存知の方も多いと思いますが簡単に言うと、変形労働時間制は、例えば、月176時間入る水槽があるとし、そこに毎日働いた時間を入れていくイメージです。そして溢れた時間がその月の時間外手当として支給されることになります。祝日がある月はどうしても水槽がいっぱいになるスピードが落ちるため、いつも以上に働いて同じ金額がもらえる感じになります。

過去にいくつかのクリニックで、このことが原因で退職するスタッフを見てきました。他業種から医療事務を希望する場合は、この変形労働時間制を理解しても納得してもらえないケースがあります。特にお金に関することはしっかりとした説明が求められます。

スタッフにはそれぞれ働く理由がありますから、この部分をクリアにしておくことでトラブル防止やスタッフの退職につながることを防ぐことができます。

私がいる石川県では約8割のクリニックで変形労働時間制が採用されているようです。これから働き手が少なくなる社会情勢の中、コミュニケーションを取ることで思い違いからくる不安や不満を防ぎ、雇用継続につなげることが安定したクリニック経営には必要になります。

執筆者:田中秀幸(Hideyuki Tanaka)

株式会社ファイネス 医業開発室に所属し、クリニック開業サポート、クリニック承継サポートを中心に活動しています。 スポーツが好きで、中学クラブチームのメンタルコーチや医療・介護・福祉関係者へメンタル講習をしています。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意下さい(スパム対策)