2019
09.09

「人事管理」と「労務管理」~両輪で動かすことの大切さ~

人事

現場管理者の役割の一つに「人事労務管理」があります。現場管理者は、経営資源(もの、お金、時間、情報、ノウハウ等)を使って、最大の成果を生み出すことが求められます。そのためには、資源の一つである「ひと」がいい意味での効率よく動ける仕掛けが必要です。それが「人事労務管理」です。

「人事労務管理」と一つの用語で表記されることが多いのですが、「人事管理」と「労務管理」は分けて考えることが必要と思います。なぜならば、この2つの「管理」は「ひと」を軸にしているものの定義が全く異なるからです。

「労務管理」とは、「人を正しく雇用すること」です。正しくとは、法律に基づいて働く状態を管理することです。法律とは、言うまでもなく労働基準法です。そのほかのも昨今働き方改革でも日常的に触れるようになった法律で、労働安全衛生法があります。「労務管理」は必ず行わなければならないことで、違反すると罰せられます。実は私たちは、毎日、労働基準法や労働安全衛生法と隣り合わせで働いているにも関わらず、そして違反すると罰せられるにも関わらず、現場管理者はこの法律をほとんど読んだことがないのも実際のところです。大切な従業員が「正しく雇用されているのか」を確認するためには、働く上でこの2つの法律の知識を得ておくことは現場管理者の責務だと思います。例えば、時間外労働が発生したら、割増賃金を支払うことや有給休暇の請求があったら拒否はできないが変更はできる、健康診断やストレスチェックによる心身ともに健康な状態を維持するなどが労務管理にあたります。

一方、「人事管理」は「人を活かすこと」です。活かすとは、①労務管理ができた(正しく雇用した)上で従業員一人ひとりの能力を最大限に仕事に使ってもらい成果を出すこと、②一人ひとりの適性や意思をきいた上でそれに見合った仕事をしてもらい成果とともに仕事への達成感ややりがいを感じてもらうことです。労務管理と違って「人事管理」は必ずやらなければならないという法律や罰則はありません。しかし、「人事管理」ができていない組織はどうなるでしょうか。例えば、心身ともに健康な状態ではありますが、不得意な仕事をさせ続けている。この状態が続くと、仕事を続けたいという気持ちはどんどんなくなってきます。当然、やる気がなくなるわけですから、成果も上がりません。一時の成果はあっても、組織が継続するための「維持」にはつながらないので、組織運営に限界がきます。「人事管理」は、やらないと成果が長続きしないという組織運営に多大な支障をきたしてしまうことにつながるのです。「人事管理」は、法律ではないので知識を得たからといってできることではありません。人が「仕事をもっとしたい」、「頑張りたい」、「楽しい」、「嬉しい」と思えるよう仕掛けることが現場管理者のする「人事管理」だと思うのです。そのためには、例えば、全従業員に必ず朝の挨拶は欠かさない、頑張っている様子の従業員に「頑張ってるね」「お疲れ様」「頑張ってくれて助かるよ」など声をかける、従業員が何を思って仕事をしているのか定期面談をするなどが具体的な仕掛けとして挙げられます。

「人事労務管理」はまとめて実践するのではなく、「人事管理」と「労務管理」を切り分けて両輪で実践することではないでしょうか。

執筆者:下田静香(Shizuka Shimoda)

医療経営オンライン編集長。株式会社エイトドア代表取締役。経営学修士(MBA)。病院、介護施設で人事制度、評価制度、目標管理制度の構築と定着を中心に人材育成、組織開発のアドバイスしています。楽しく仕事ができるためには?!をテーマにしています。

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