2019
02.25

医療現場で遭遇するクレームには、どのような特徴があるのでしょうか

患者満足度, 接遇マナー

医療現場では日々、さまざまな問題が生じていますが、その中でも多くのスタッフを悩ませているのが“クレーム”に関する問題ではないでしょうか。

それを裏付けるかのように、医療機関のクレーム対処を題材とした研修や書籍は数多くあります。

クレームというと他の業種でもよく見られることですが、医療現場とはどのような違いがあるのでしょうか。

医療現場におけるクレームの特徴

来院する方は、何らかの不調を抱えています。

元気でハツラツとしている時には何も感じなかった言葉や態度であっても、体調が優れない時や心が疲れている時は予想以上に傷つくものです。

「何も、そんな言い方をしなくてもいいじゃないか。」

「もう少し、丁寧に接してくれてもいいのに。」

というように、患者さんは不満を抱きやすい環境に置かれていることが大前提となります。

また、医療機関のクレームには、多様な職種が働いているからこそ縦割り意識が抜けないという背景もあります。

少人数の小さな医療機関であれば院長の目が行き届きやすいものですが、組織が大きくなればなるほど、意識しなければ多部署との連携が取りにくくなります。さらに、近年はより専門性が高まってきていますから、同じ職種であっても部署が違えば何をしているのかわからない…と言うことも珍しくないようです。

例えば、このような事例がありました。

ある病院に長く務めている事務職員は、院内を移動するだけで時間がかかるので、診療部長や師長クラスの方であっても内線でやり取りして一度も顔を合わせたことがなかったそうです。お互いに認識がずれ、本来なら一度で済むはずの書類を何度もやり取りしたことも多々あり、余分な時間や労力をかけていました。

この事務職員に限らず、どのような職種であっても院内の様子は知っておくべきだと思っています。暇そうにぶらぶら歩くのはいけませんが、何か用事があった時は内線だけで済ませずに顔を見にいく、そして、受付や待合室の様子、病棟や検査室の前を通ることできっと得られるものがあるはずです。

日常的にそのような行動をしていれば、患者さんから多部署にクレームがあった際も「私の仕事ではないから」という気持ちから「あの人なら対応してくれそうだ」と言う気持ちへと変化していくものです。

クレームはどうして起こってしまう?

そもそも、なぜクレームは発生してしまうのでしょうか。

それは、患者さんの期待と医療機関の対応にギャップが生じているからです。

マズローの欲求5段階説をご存知でしょうか。

アメリカの心理学者であったマズローが論文内で提唱したもので、5つに分けられたピラミッドの階層の底辺には「生理的欲求」があり、その上に「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」そして、一番上には「自己実現の欲求」があるとする考え方です。

医療機関に来院する段階で、生きていくために必要な生理的欲求や、不安な気持ちから解放されたいといった安全欲求が満たされていないと考えられます。この部分は、医療を提供する施設として当然に応えなくてはならない部分ですし、専門性の高い領域にクレームをつけようとする患者さんはそう多くありません。

クレームがより発生しやすいのは、これより上の段階の欲求が満たされていないからではないでしょうか。

もちろん、クレームの内容によっては理不尽な要素が含まれていることもありますが、「担当が違いますので」「そうかもしれませんが、でも…」と言った相手を否定するようなフレーズは慎みたいものです。また、対応が遅くなればクレームも増大しまうので、迅速に対処することも大切です。

そして、クレームは組織を改善させる貴重な情報として受け止め、自己成長につながるものだと考えることで、認識が少しずつ変わってくるかもしれません。

原麻衣子(Maiko Hara)

医療の人事ドットコム編集長。
これまで、MR(医薬情報担当者)経験を経て、地方病院における人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当してきました。現在は、クリニックにおけるWebコンテンツの制作や企画プロデュースに携わっています。

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