04.09
医薬品卸を取り巻く変化
新型コロナウイルスの感染拡大で様々な業種でビジネスモデルが変化している中、私が所属している医薬品卸の業界でもビジネスモデル、働き方が大きく変化してきています。
医薬品卸と言えばこれまで、注文を受けた薬を医療機関や調剤薬局に納品すること、各エリアにMS(マーケティングスペシャリスト)(※)と呼ばれる担当者がいて、各々が担当しているエリア内にある医療機関、調剤薬局を訪問し薬のPRすることが主な業務でした。医療機関へ訪問しドクターとの関係を構築することで薬などの注文をいただくスタイルがここ最近大きく変化しています。
医薬品卸大手の企業ではいち早く営業のリソースを物流へと移行し、MSを減らしています。MSを減らしても売り上げがさほど減らない現場を他の医薬品卸が見ているため、各医薬品卸企業が軒並みMSを減らし、物流へリソースを集約するような動きになっています。
ジェネリック医薬品が増えることで物流センターを新築し、医薬品の在庫スペースの確認が求められています。発注日数を減らし一括購入することで納入費を抑える工夫もされています。
新型コロナウイルスの影響で、ドクターや薬剤師はMSが訪問しなくても大丈夫という思いが生まれたのも物流へシフトできた大きな要因になっています。MSが減った分、一人当たりのMSが担当するエリアが広くなり、効率よく訪問することを見直されています。どこにどれだけの時間と労力を使えば売り上げにつながるかを考え訪問しているようです。
私は開業サポートという仕事柄、多くのご縁をいただき北陸、関東、東海、関西、九州で仕事をさせていただいています。最近は美容クリニックの開業サポートをさせていただくことも出てきていますが、ここにも医薬品卸の変化を感じています。
歯科クリニックでも美容クリニックでもなかなか薬の取引をしてくれないという点です。「美容クリニックも自由診療の部分が多いから」との理由で取引を断られるケースが多々あります。自分がいる北陸では歯科クリニックでも美容クリニックでも取引をさせていただいていますが、他の事情が違うようです。開業サポートをする上で医薬品卸を見つけることに時間と労力がかかっています。
時間と労力がかかると言えば医薬品卸では、医療機関や調剤薬局からの電話が急激に増加しています。電話の内容はジェネリック医薬品の在庫確認。通常はオンラインで薬を発注していただくのですが、昨今のジェネリック医薬品不足から医薬品卸へ直接電話してこられ、入荷状況を確認される方が増えています。どこの医薬品卸でも在庫確認のための電話対応で多くの時間が取られ、他の業務に支障が出ています。
私が行っている開業サポートの分野で言えば、「開業サポートは利益にならないからするな」と会社方針が変化した医薬品卸もあります。医薬分業が進み、処方箋の多くは院外処方として調剤薬局に集約されるため、リソースを調剤薬局へ移しています。
開業サポートをすると、医療機器など一時的な売り上げと利益はありますが、時間と労力がかかる割には身入りが少ないと感じているようです。医薬品卸は「モノ売り」の企業であるため、利益優先の観点から考えると事情は分かります。
逆に言えば、他社が注力しなくなっている開業サポートをPRすることで、経営サポートに繋げ、北陸のみならず全国各地で仕事をさせていただけるようになってきました。医薬品卸の環境が変わってきていますが、その変化を利用しドクターに喜ばれるサポートを続けていきたいと思います。
(※)MSとはマーケティングスペシャリストの略であり、医薬品卸企業における営業職のこと
執筆者:田中秀幸(Hideyuki Tanaka)
株式会社ファイネス 医業開発室に所属し、クリニック開業サポート、クリニック承継サポートを中心に活動しています。 スポーツが好きで、中学クラブチームのメンタルコーチや医療・介護・福祉関係者へメンタル講習をしています。
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