スタッフを取り巻く環境に思いを馳せてみる

「仕事とプライベートの時間をどうしたら上手く切り替えられるのだろうか。」

コロナ禍においてテレワーク化が急速に進む一方で、このような声がよく聞こえてくるようになりました。

数年前からテレワークを推進していた総務省の施策や実施報告などを見ると、今後も継続を推奨するような動きが大多数であり、現場とのギャップが感じられます。

その背景には、これまでの日本における典型的な働き方が影響していると思います。日本の場合は欧米諸国に比べると会社への帰属意識が高く、チームで業務を担当することが多いため、メンバー同士のコミュニケーションがより重要視される傾向が強いのですが、これをテレワーク下では実現しにくいとする風潮がありました。

また、テレワークが日常化することで自宅の一部をオフィスにする必要があることも、仕事とプライベートの区別がつきにくい要因として考えられます。

そもそも、仕事とプライベートは明確に切り分けられるものなのでしょうか。

もちろん、雇用されている場合は自身で労働時間に気を配らなくてはいけないですし、長時間労働が心身の疲労を引き起こしてしまうことには十分に配慮しなくてはなりません。

しかし、会社以外の活動、例えば地域活動や子育て、親の介護などは、少なからず仕事や働き方に影響を及ぼしているのではないでしょうか。

総務人事として勤務をしていた当時、年末調整や扶養等について職員ではなく、そのご家族から問い合わせの電話がかかってくるということが珍しくありませんでした。

勤務したての頃は、どうして職員本人を通さないのだろうと不思議に感じていたものですが、ある時から、その職員の仕事場以外での役割について思いを馳せるようになりました。

私たちは職業人としてだけではなく、市民として、親として、時には学びを深める学生としてなど、実に様々な役割を担っています。親の介護が必要になってくると、子供としての役割の比重が増えていくことでしょう。

このような考え方をライフキャリアレインボーと言います。ライフキャリアレインボーとは、アメリカの経営学者でありキャリア研究者のドナルド・E・スーパー(1910~1994)が提唱した理論です。この理論では、キャリアを職業そのものと捉えるのではなく、人生における年齢や様々な役割の組み合わせであると定義し、場面における役割の重なりの様を虹という概念で表しています。

まさに、それぞれの役割が影響し合って仕事やプライベートが成り立っていると思えるのです。

そう考えると、テレワークが進み在宅勤務が増えたからと言って、ここからは仕事でここからはプライベートと明確な線引きをする必要はなく、その境界線は曖昧なものでよいのではないでしょうか。

このような状況の中でリーダーや管理者には是非、スタッフが担っている職業人以外の役割やバックグラウンドにも思いを馳せて欲しいと考えています。それはきっと、個々人の働き方や思考が変わるきっかけとなりますし、コロナ禍でのコミュニケーションが取りにくい環境下、関係性をよくする潤滑油のような役割になっていくのだと思っています。

執筆者:原麻衣子(Maiko Hara)

株式会社エイトドア 人事アドバイザー。MR(医薬情報担当者)経験を経て、地方病院における人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当してきました。現在は、クリニックにおけるWebコンテンツの制作や企画プロデュースに携わっています。

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