「仕事を辞めたい」という気持ちになったとき~新入職員に考えてほしいこと~
新型コロナウイルス感染拡大の中、2020年度の新入職員はこれまでにない入職時期を経て、半年が過ぎました。新人研修も充分に行われないまま、徹底と緊迫の感染防止対策の状況下で、現場での経験を重ねてきたことと思います。一方で、収束の見えないことから、心身ともに疲弊していることも否めません。さらに、周囲の先輩たちも「これまでにない経験」もあり、新入職員の皆さんへのフォローアップも難しい状況にもあると思います。
そんな中、「もう辞めてしまいたい」と思う気持ちが出てくるのが半年過ぎたぐらいからです。この度の、新型コロナウイルス感染拡大がなくても、毎年この時期になると、新入職員の離職が“ポチポチ”と出てくるものです。
その対策として、今の時期に新人フォローアップの研修を実施するところも少なくないと思います。
新入職員が「辞めたい」と思うことを防止するために、しておきたいことがいくつかあります。その1つに、フォローアップ研修等で、「辞めたい」と思ったときにどんなことを考えるべきかの教育が必要だと思います。
まず、「仕事を辞めたい」とき、今の職場を去りたいのか、そもそも違う職種や業種に行きたいのかの理由分析をすることです。その時、一人で考え込まないことを伝えておきたいものです。1年目の職員が自分で解決するには、限界があるからです。相談しにくいことかもしれませんが、先輩(OJTトレーナーやプリセプター)や上司に遠慮なく相談してほしいことを伝えることです。
また、入職1年以内に転職するリスクも伝えておく必要があります。本人も問題だから、そこまで教える必要があるのかという意見もあるかもしれませんが、自院の職員としてだけではなく、社会の先輩として伝えることだと思います。
1年以内で転職するリスクには、3つあります。1つ目は、次の志望先の採用担当者は、「1年も経たないのに何で辞めたんだろう・・・」、「1年すらもたないんだから、うちで採用しても同じかもね・・・」と考えるということです。次への就職活動は、マイナスとして捉えられることが多いということです。
2つ目は、履歴書に一生残るということです。この先、どんなに高いスキルを持っていても、履歴書に職歴が残ることを今一度考えることです。3つ目は、一度離職すると転職のハードルが下がってしまうため、「転職癖」がつく可能性があります。これは、自分では止めることができなくなり、少しでも職場で嫌なことがあると転職を繰り返すようになることです。
さらに、転職を考えるとき振り返って欲しいことも伝えておくとよいでしょう。ここで確実に身についたことは何か、次の職場に行くとき、自信を持って「これが得意」「これなら負けない」ということがあるのか、それは何かです。何も思いつかないということであれば、もう少し今の職場で頑張ってみることを考えさせることです。
安易に「今が嫌だから辞めたい」ではなく、遠い将来まで考えた上で、1年目で離職することがいいのかどうかを考える機会を作ること、それが離職防止対策の1つになるのではないかと思います。
執筆者:下田静香(Shizuka Shimoda)
医療経営オンライン編集長。株式会社エイトドア代表取締役。経営学修士(MBA)。病院、介護施設で人事制度、評価制度、目標管理制度の構築と定着を中心に人材育成、組織開発のアドバイスしています。楽しく仕事ができるためには?!をテーマにしています。