馴れ合いの職場になっていませんか?患者さんにとって居心地のよい空間づくり
一般企業における顧客と言えば消費者、つまり商品やサービスを購入してくれる人のことを指しますが、医療機関における消費者は患者さんです。そのため、治療を含めたサービスや環境が、患者さんにとってよい影響をもたらしているのかといった視点は、クリニックの経営面や円滑な運営から考えると、重要なポイントになってきます。
患者さんと直接、接することが少ない部署もありますが、患者さんの側から病院やクリニックを見たときに気になるのが、スタッフ間のおしゃべりや院内の雰囲気です。確かに、患者さんが少なく閑散としているときには手持ち無沙汰となる時もあると思いますが、受付や診察室近くでスタッフ同士がおしゃべりしている光景は、あまり気持ちのよいものではありません。
また、このようなこともありました。在籍年数が長いスタッフが「これお願いね!」と院長や管理職の肩を軽く叩くシーンを見たときです。これは仕事が頼みやすい関係というよりも、馴れ合いが日常となっている組織だと捉える患者さんもいるかもしれません。
アットホームな職場、風通しのよい職場と言えば聞こえはよいのですが、一方でそれは馴れ合いの職場となるというと非常にイメージがよくありません。これは、馴れ合うことはで、組織に様々なデメリットを生じてしまうからです。
馴れ合いの職場には2つの特徴があると考えます。
まず、馴れ合いのある職場では、暗黙のルールが多く存在しがちです。ルールを明文化していない場合、「これくらいならいいよね」、「前もそうだったから」といったように境界線が曖昧となります。これで仕事がまわっているうちはよいのですが、これまでと違う事例が発生した場合、トラブルにつながる可能性が非常に高くなります。例えば、経費に関して馴れ合いの関係で処理した場合、しっかりとした規定や手順に沿っていなければ税務署や医療監視等の監査での指摘を受けた時に対応できないことが考えられます。
次に、馴れ合いの職場では、そこに居心地のよさを感じているスタッフだけが残る傾向があります。つまり、この職場に合わないと感じるスタッフは去っていくので、ますます関係性が強くなっていくのです。
新入職員が入ってきた場合も同じように、馴れ合いによって関係性が強固になっている組織では馴染みにくくなりますし、残念ながらせっかく入職した新入職員が職場を去ってしまうということがあるかもしれません。
馴れ合いによる関係性の強さは、風通しが悪く、課題や問題点に気付きにくく、反対意見が出にくいという組織になりがちです。
では、このような組織はどう改善していくべきなのでしょうか。
組織はプライベートなものではなく、公の場であること。そして、仕事をする上ではお互いに敬意を払って業務に取り組むことが大切だと機会があるごとに、スタッフへ伝えるようにします。
また、時には外部研修や見学など、中だけではなく外と交流する機会を持ち、多様な考え方を受け入れられる風土づくりにも力を入れることも有効です。
このような事例に対して特効薬はありませんが、スタッフ全員が課題を共有し、少しずつ変えていこうと取り組み続ける姿勢が、患者さんにとって居心地のよい医療機関になっていくのだと思います。
執筆者:原麻衣子(Maiko Hara)
医療の人事ドットコム編集長。
これまで、MR(医薬情報担当者)経験を経て、地方病院における人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当してきました。現在は、クリニックにおけるWebコンテンツの制作や企画プロデュースに携わっています。