教えることを“丸投げ”しない~教育担当者の育成~

新型コロナウィルスの影響で世界中が混乱に陥っています。得体が知れないからこその今の状況なのだと思われます。世界一致団結でワクチン開発を祈るばかりです。

一方で、一般企業では景気の冷え込みが見込まれることから2020年4月入社の内定取り消しも発生しているようです。とはいえ、人員不足の医療機関では、今この有事のでも予定どおり新人さんは入職することは迷いもないことだと思われます。ただ、一つだけ考えてほしいことがあります。それは、教える役割のスタッフに「教えることを“丸投げ”していないか」ということです。教える役割(OJTトレーナー)のスタッフは、大体のところ「仕事ができるスタッフ」に担当させがちです。仕事を覚えてほしいから、仕事をよくわかっているスタッフに任せたいという気持ちは理解できます。しかし、「仕事ができるスキル」と「教えることができるスキル」は、全く違うものだと思うのです。

では、「仕事ができるスキル」とは、「教えることができるスキル」とは何なのでしょうか。

「仕事ができるスキル」には、医療分野ですと、各職種の国家資格で勉強した専門知識、医療機関に入職した後の業務知識(それぞれの医療機関での仕事のすすめ方)、自分の仕事を計画立てて進められる力、メンバーと折り合いをつけながら仕事を進められるコミュニケーション力他があります。「教えることができるスキル」はこれの加えて、わかりやすく伝える力、教えられる側の仕事の様子を観察する力、相手が納得できるような指摘・注意の話し方、周囲から注意ばかりされているスタッフにはやる気を損なわないようにするように声をかけられる力など、全く違うスキルが求められるのです。

そうすると、仕事ができるから教えられるだろうという安易な考えは、今一度リセットする必要があると思うのです。「教えることができるスキル」を教える役割のスタッフにきちんと説明をして、教えることがそのスタッフの育成になっていることを伝えることは大切なのではないでしょうか。

教える側が自分も学んでいるのだという意識を持たせることで、教えられる側と教える側双方が育っているということを醸成することは現場管理者の「人材育成」の役割そのものだと思います。

執筆者:下田静香(Shizuka Shimoda)

医療経営オンライン編集長。株式会社エイトドア代表取締役。経営学修士(MBA)。病院、介護施設で人事制度、評価制度、目標管理制度の構築と定着を中心に人材育成、組織開発のアドバイスしています。楽しく仕事ができるためには?!をテーマにしています。

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