知らず知らずのうちにハラスメントの加害者とならないためにできること
昨年5月に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律」が参議院本会議にて可決、成立しましたが、いよいよ大企業は今年の6月から、中小企業においても2年後から施行となります。
今回の改正では「女性活躍の推進」と「ハラスメント対策の強化」について焦点があたっており、女性がより働きやすい環境を整え、家庭との両立がしやすいような職場づくりとともに、パワハラやセクハラが起こらないような対策を施すことが求められています。
つまり、女性も含めて、長い職業生活の中で十分に活躍できる職場環境が重要視されており、これは雇用する側にとって、早急に取り組まなければならない課題として認識されているということを意味しています。
一方で、厚生労働省が行なった“平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査」では、従業員向けの相談窓口で最も多い相談はパワーハラスメントであり、その割合は3割を超えているという結果が物語っているように、パワハラは既に社会問題化しています。もちろん、各医療機関や福祉施設においてもパワハラに対する取り組みは必須であり、快適な職場環境づくりの一助として認知されるようになってきています。
一口にパワーハラスメントと言っても、身体的に打撃を受けるものから精神的なものまで、実に幅広いことをご存知でしょうか。厚生労働省では、職場のパワーハラスメントを次の6種類に分類しています。
- 身体的な攻撃・・・暴力や殴打
- 精神的な攻撃・・・人格否定、執拗な叱責
- 人間関係からの切り離し・・・別室での隔離、無視
- 過大な要求・・・明らかに長時間の苦痛を伴うような作業を命じる
- 過小な要求・・・能力や役職に見合わない仕事を与える
- 個の侵害・・・過剰なプライベートへの干渉、詮索
一見すると、パワハラとは上司から部下に行うものというイメージがあるかもしれません。しかし、力は水と同じく、高い方(強い方)から低い方(弱い方)へと流れる傾向があります。
突然、人事異動によって職場へ新たに配属された上司よりも、そこに長くいる職員の方が職場やスタッフのことを熟知していて、パワーを有していることも珍しくありません。
しかし、それを利用して、新しく配属された上司に職場のルールや決まりを教えない、無視をするといった行為が上司の孤立を招き、結果的にパワハラとなってしまう可能性も十分に考えられます。
このように、パワハラとはどのような間柄であっても起こり得るものです。また、自分は大丈夫だと思っていても感情のコントロールがうまくできなければ、気付かぬうちに加害者になることだってあるのです。
どんな事例がパワハラを含めたハラスメントに当てはまるのか、職場全体が基礎知識を共有しておくことはとても大切なことです。加えて、プライベートを仕事に持ち込まないなど感情のコントロールについても、普段からトレーニングしておくことで被害を生まない職場づくりができるのではないでしょうか。
執筆者:原麻衣子(Maiko Hara)
医療の人事ドットコム編集長。
これまで、MR(医薬情報担当者)経験を経て、地方病院における人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当してきました。現在は、クリニックにおけるWebコンテンツの制作や企画プロデュースに携わっています。