『謝れない人』は仲間になれない
こんにちは、小柳です。立春を迎え暦の上では春を迎えましたね。皆様お変わりございませんか?今日はある元職員のお話をしようと思います。
その方は採用試験では笑顔で挨拶ができ、決して悪い人ではありませんでした。むしろ好印象で周囲の期待も大きかったのです。それにも関らず周囲と馴染むことができず、最終的に契約更新をお断りしました。そのような結果に至った背景や理由は単純ではないのですが、ひとつ大きな理由は『謝れない人』だったということでした。
保険証を紛失しかけた時は事務所で仕事をしている私のところに謝罪にやって来たのですが、一緒に探し回ってくれたスタッフ達には「すみません」という一言がなかったのだそうです。その場にいなかったので真偽はわかりませんが、少なくとも、ことの重大さの自覚と謝意が周囲のスタッフ達に伝わっていませんでした。
更に立場を難しくしたのは「私じゃありません」という言葉でした。「これやりましたか?」と聞くと「やっていません、私じゃありません」と切り返すのです。徐々に「仕事を教えたくはない」「一緒に仕事をしたくない」というスタッフが増えていきました。
毎回小さいミスを指摘して虐めるのでしたらそれはパワハラですが、特に職場に入った初期はミスの原因が本当に自身かどうかというのは二の次です。少々理不尽ではありますが、一旦飲み込んでもらいたいと思いました。ミスの指摘以外にも、気が付いたこと、知っておいた方が良いことを更に踏み込んで教えてくれようとしている先輩の話は宝の山。仕事を深めるヒントがたくさんあります。まず謙虚に話を聞くことが大切です。職場にはやるべきこと、やってはいけないこと、やった方がいいこと…一見単純な受付の仕事でもあってもたくさんのルールや慣例、そして個別の特殊な事情など伝達しておくべきことは多岐にわたるのです。
《謝る》というのは《悪いことをしたので申し訳ない気持ちを表現する》ことですが、その《悪いこと》というのは法律的な違反であるようなことから、仕事上のミス、更に足を踏んでしまったとか物を落としてしまったとか日常的な些細な出来事まで多岐にわたります。ひとつ言えるのは、この《悪いこと》の基準やルールがお互いに一致していないと謝意のやり取りがかみ合わないということです。前述の《保険証紛失事件》はあってはならないし、受付業務では重大な問題なのですが、それを理解できていないことで既存スタッフとの温度差が浮き彫りになってしまったのです。
職場は規模も事情も様々ですが、その社会なりのルールがあります。それを共有できなければ、なぜ自分が謝る必要があるのかを理解できないので、心から謝ることはできないし、たとえ謝ったとしても心がこもっていないので謝意が伝わりません。
『謝れない人』とは『ルールの共有ができない人』であり、ルールの理解が伴わないが故に集団に受け入れられることが難しいと言えます。個人で仕事をするのであればそれでもよいのですが、多くの場合チームで連携して仕事を進める医療現場では適性は低い、と考える人も多いでしょう。
つまり『謝れない人』は仲間に受け入れられにくいということだと思うのです。
執筆者:Airi Koyanagi
薬剤師。大手調剤薬局チェーン勤務後、戸塚ヒロ眼科事務長として10年以上クリニックの運営に関わっています。医療スキルと患者様サービス及びスタッフの働き甲斐の3つを成り立たせたいと今も奮闘中