人事担当者に求められる姿勢~謙虚さを忘れない~
以前、組織に属して人事の仕事をしているとき、ある先輩から言われたことがありました。
人事の仕事は謙虚でなければならない。職員個人の情報もすべてわかるし、ましてや個別の給与額やその決定理由情報も知っているので、どうしても自分がすべての情報を握っていると勘違いしてしまう。人事担当者は、「情報を握っている」のではなく、「情報の修正更新の業務を任されているだけ」で、その「情報を管理」しているのではないと。
情報の修正更新、漏洩防止そのものが管理業務と言われるかもしれないですが、そうではなく情報把握とそのやりくりという意味合いの「管理」ということを言っていたのだと思います。
確かに、人事の仕事をしていると職員個人の仕事以外の情報も耳に入ってきます。だからこそ、機密情報を「知っている」だけなのを「握っている」と勘違いしがちになると感じたのを今でも覚えています。
しばらくして、ある銀行の支店長を経験した方と話す機会がありました。その方も同じようなことを言っていました。支店長は、地域の中小企業の社長さんに融資の依頼をされると、「自分がお金を貸してやっている」という気持ちになってしまって、ついつい地域の住民に対して横柄な態度をとってしまう。しかし本来は逆で、お金を貸してその金利で銀行は成り立っているのだということをすっかり忘れてしまうのだと。そして、銀行というバッググランドがあるからこそ融資ができることも忘れている。「支店長」の肩書がなくなったら、地域に何もできない人なんだよと話してくれました。この話を聞いたとき、人事担当者と全く同じことなのだと思いました。
人事担当者は、各部門の従業員が地域にサービス提供してくれていることで利益を得て、給与がもらえていることを忘れてはいけないと思うのです。本来の人事担当者の役割は、従業員が気持ちよく本来業務に従事できるよう、不安がないよう充実した気持ちで仕事ができるようにすることだと思うのですが、どうしても個人情報を知ってしまうと「握っている」という優位性を自分で持ってしまいがちです。どの仕事も同じかもしれませんが、特に人事担当者は「謙虚な姿勢」を忘れてはならないと今でも思っています。
執筆者:下田静香(Shizuka Shimoda)
医療経営オンライン編集長。株式会社エイトドア代表取締役。経営学修士(MBA)。病院、介護施設で人事制度、評価制度、目標管理制度の構築と定着を中心に人材育成、組織開発のアドバイスしています。楽しく仕事ができるためには?!をテーマにしています。