「お疲れ様」のひとことがやる気の原動力に~チームのトップの役割~

先日、介護施設を運営している社会福祉法人の理事長と話す機会がありました。先代の理事長が急逝され、勤めていた会社を退職し、急遽理事長に就任することになったとのことでした。雇われる側だったのが、大勢のスタッフを雇う側の経営者になったこと、これまで会ったことのないスタッフたちのトップに立つことに大きな不安があったとのことでした。しかし、スタッフがいるからこそ、まだ何をしていいのかわからない新任理事長として役割を果たすことができるのだと思い、毎日一人ひとりのスタッフが仕事を終えて帰るとき、「今日もお疲れ様」というひとことを欠かさなかったそうです。そのひとことをスタッフが聞いてくれているのかはわからないし、聞いていても聞いていなくてもよかったが、一日の仕事をしてくれたスタッフに感謝のことばをかけることが経営者の仕事だと思ったとのことでした。すると、何年かしてスタッフから言われたことがあったそうです。「理事長からの帰りのひとことが今日まで仕事を続ける気持ちにさせてくれたんです」と。その理事長は、「介護施設は、人を大切にしなければならない現場だからこそ『今日もお疲れ様』のひとことは大事なんですよ」と言っていました。

フレデリック・ハーズバーグ氏(1923-2000)は、人がやる気になるとき衛生要因と動機付け要因の2つがあるという二要因理論を研究したアメリカの臨床心理学者です。衛生要因とは、処遇(給料や休暇など)がよくなる、作業条件・労働条件がよくなる、組織の方向性が定まっている、人間関係がよいなどで、よくなればやる気につながるが、逆に低下すると不満の要因になってしまうと言っています。動機付け要因は、他者に認められる、感謝される、達成感を感じる、自分が成長したと実感するなどで、このようなことがあるとやる気につながり、さらにその気持ちを求めるようになるといわれています。衛生要因とは異なり、低下もしくはなくても不満の要因にはならないそうです。

理事長のひとことの「今日もお疲れ様」は「動機付け要因」の一つと考えられます。今日一日スタッフがやってくれた仕事を認めて、さらに感謝の気持ちで伝えていたのだと思います。やる気になるトップのひとことは、スタッフが働き続ける原動力の一つです。トップでなくとも、チームの長であるならば、スタッフへの感謝の気持ちを「ことば」で伝えることは大切ですね。

執筆者:下田静香(Shizuka Shimoda)

医療経営オンライン編集長。株式会社エイトドア代表取締役。経営学修士(MBA)。病院、介護施設で人事制度、評価制度、目標管理制度の構築と定着を中心に人材育成、組織開発のアドバイスしています。楽しく仕事ができるためには?!をテーマにしています。

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