医療機関における「働き方改革」について
世間の流れに違わず、医療機関でも「働き方改革」への対応に迫られています。
ちなみに、医療業界においては、特に地方での医師不足、看護師不足等と絡めて議論されることが多く、事務職員は後回しになっています。
もちろん、医療の人的資源という観点から見ればいたしかたないとは思いますが・・・。
ただ、医師、看護師の業務負担を軽減することは、同時に地域における医療体制に影響を与えてしまいます。
そこをどう考えているのか、また考えるべきなのか、政府や地方自治体からは何も示されませんし、そのことについての地域住民の意識がどうなっているのかもよくわかりません。
医師、看護師にあまり負担をかけ過ぎると、簡単に辞められてしまって、その地域の医療が立ち行かなくなる可能性が出てきます。
医療従事者の中でも特に医師や看護師はどこに行っても仕事がありますから。
医療機関の管理職の視点で見れば、非常に難しい対応となります。医師、看護師を働かせすぎると「働き方改革」に反することになると同時に、離職を招く結果になる恐れもあり、また最悪、法律による制裁を受けることになります。
でもだからと言って、「うちの病院は17時以降は一切診療を行いません。」という訳にもいきませんし・・・。
特に医師には医師法第19条に定められたいわゆる「応招義務」というものがあり、原則として診療を求められた医師は、断ることができないことになっています。その法律との整合性をどうするか。厚生労働省でも検討はされているようですが、結局は現場任せになっているのが現状です。
これが都会であれば、まだ何とかなるのかもしれませんが、地方においては、医師、看護師の負担軽減を図りつつ、同時に医療資源の少ない状況の中で、地域医療もしっかりやっていくことが求められている訳です。
要するに「あちら立てればこちら立たず」という状況であるにも関わらず「あちらもこちらも立ててね」と言われているようなものです。
はっきり言って非常に厳しいです。
「働き方改革」は来年度から関連法が施行されますが(医師への適用は2024年4月から)、医療機関としてどう対処していけばいいのか、多くの医療機関は未だ模索中なのではないでしょうか。
もちろん、医師、看護師をはじめとしたスタッフが長時間の残業をすることなく、定時を過ぎたら速やかに帰宅できるようになることは、すごく大事なことなのですが、一方で限られた医療における人的資源の活用を求められている地方においては、住民の理解促進が不可欠となってきます。
せめて政府や地方自治体には、積極的な啓発活動により、安易な受診を控えることや、医療は必ずしも完璧ではない、ということを周知徹底する努力をしてほしいと思います。
※「働き方改革」・・・ここでは「労働時間の是正」にスポットを当てています。
執筆者:さすらいの中間管理職事務員
地方の中規模(その地域では大規模)病院にて医事課長として勤務しています。日々、中間管理職としての悲哀を味わいつつ、目まぐるしく変化していく医療制度に置いていかれないよう最低限の自己研鑚に励んでいます。