情報を発信し続ける病院へ

情報が巷に溢れている昨今において、わたしたちには情報を取捨選択する力が求められています。つまり、横から流れてきた情報をそのまま受け止めるのではなく、他の情報源とつなげて一度、噛み砕くという作業が必要になるわけです。

しかし、医療に関わる情報というのは一般の方からすると専門性が高く、どれが本当のことなのかわからないことも多々あるのではないでしょうか。

そんな時、とても重宝されるのが病院側からの情報発信です。これだけインターネットが普及していますので、患者さんもそこからたくさんの情報を得ています。

離島やへき地のように、近隣に医療機関が少ない地域であれば、開示している情報が少ない医療機関であっても受診者数に影響はないのかもしれませんが、都市部など複数の医療機関が近隣にある場合は、患者さん側が病院を選ぶ時代です。

せっかく素晴らしい人材を採用し、最新の設備を整えたとしても患者さんがこなければ医療機関としての役割を果たすことはできません。

また、患者さん側に対してだけではなく、病院で働くスタッフ側に向けた情報発信も必要不可欠です。

大きな医療機関になればなるほど縦割りの組織になり、他職種や隣の部署がどのような仕事をしているのか把握していないということも珍しくありません。お互いの業務を理解し合い、風通しの良い職場づくりにも情報発信は有効なのです。

では、具体的にどのような情報を伝えていくべきなのでしょうか。

病院概要や交通案内はもちろんのこと、疾患別の入院や外来患者数や検査・手術件数といった各種データを提供することは、患者さんがより自分に合った病院を探す一助になります。

通常、院内でしか得ることのできない広報冊子には、季節の病気や部署の紹介が掲載されているケースが多いので、せっかく作成しているのであればホームページに掲載するなど、スタッフや患者さんに広く公開してみてはいかがでしょうか。

そして、情報を伝える相手は患者さん、院内スタッフだけに限りません。これから一緒に働くかもしれない未来のスタッフに向けても素晴らしい効果を発揮します。

これは一つの事例になりますが、ある病院が臨床研修医の応募数の低さに苦慮していました。あまりに応募者数が減ると、今後の採用枠にも関わるからです。

そこで、ホームページを一新し、医師をはじめとしたスタッフを顔写真付きで紹介して診療科ごとの特徴を伝えることで、応募者数の大幅な増加につなげることができました。

医師だけではなく、看護師など他の職種であっても同じことが言えます。ポイントは、その病院に興味を持った人が、これから働くイメージを描きやすいような手助けをすることです。

良い病院づくりは院内外、どちら側にも情報発信をして耳を傾ける姿勢が必要だと感じています。

原麻衣子(Maiko Hara)

医療の人事ドットコム編集長。
これまで、MR(医薬情報担当者)経験を経て、地方病院における人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当してきました。現在は、クリニックにおけるWebコンテンツの制作や企画プロデュースに携わっています。

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