見て覚えるでは育たない!?経験やスキルを上手に伝える方法とは
医療機関でなくとも企業にとって人材は宝、最も重要な位置付けの一つです。
特に、長年、従事している職員や医療技術に長けているスタッフにはできるだけ活躍して欲しいものですし、その知識や技術を後輩や新人にも伝えていくことができれば、より多くの成果が見込まれることでしょう。
学校や社会で過ごしていく中で、わたし達は様々な経験を積み、知識を吸収しています。それらが蓄積されていくうちに個々人の経験則がつくられていくのですが、なかなか他人には伝えにくい部分もあります。
このように、相手に伝えにくい、表現しづらい知識やスキルは、暗黙知と呼ばれます。
例えば、後輩に「どうして、うまく患者さんとコミュニケーションできるのですか?」と聞かれた時に、「なんとなく、相手の考えていることがわかるから」「これまでの経験からだよ」と主観的な伝え方になってしまうことがありますが、これも暗黙知の一つだと言えるでしょう。
この暗黙知には個々人が蓄えた知識やスキルがつまっています。ですから、暗黙知を共有することができれば、もっと業務を効率化し、後輩や部下の成長に寄与することができるのです。
では、どうしたら暗黙知を共有することができるのでしょうか。
それにはまず、暗黙知を誰もがわかる表現へと変換する必要があります。つまり、「どうして、うまく患者さんとコミュニケーションが取れるのですか?」と聞かれた時に「それはね、患者さんの顔をしっかり見て表情を読み取り、その人の気持ちを察しているからだよ」といったように、知識や技術習得のコツやプロセスを文書や音声などで記録しておくという作業が必要となります。場合によっては、動画を活用してもいいかもしれません。
誰が見てもコツやプロセスがわかる状態にしておくことで、個人が持つ暗黙の知を他人に伝えていくことができるのです。
とは言え、これはかなり骨が折れる作業になります。しかし、一旦、形にしてしまえば、軌道修正を繰り返しながらより良いものへと作り変えていくことも容易になります。
また、どうしても本人が暗黙知を形にできないという時には、それを知りたいと思う人が質問を繰り返す方法も有効です。質問した答えに納得することができれば、それらを積み重ねて形にしていくのです。
一昔前は、デキる上司や先輩を見て、真似て成長していくということが日常的でもありました。それも一つの手段ではありますが、やはり、見て覚えるというスタイルでは、誰にでも取得できる知識や技術にはなりにくく、達成度にばらつきが生じてしまいます。
個々人が蓄積した知識や技術は財産です。それを個人だけで終わらせてしまうのではなく、次の世代まで伝えるための工夫が必要ではないでしょうか。
原麻衣子(Maiko Hara)
医療の人事ドットコム編集長。
これまで、MR(医薬情報担当者)経験を経て、地方病院における人事、給与、臨床研修プログラムの構築を担当してきました。現在は、クリニックにおけるWebコンテンツの制作や企画プロデュースに携わっています。