地域医療構想の本質とは?

急激な少子高齢化の進展を迎えて、医療財源や医療従事者の確保が急速に困難になってきています。そのため、これまでのように医療機関がそれぞれ自分たちのやりたい医療を提供する(例えば急性期医療)という従来のやり方ではなくて、地域を一体とみなし、患者の治療プロセスに応じて切れ目のない医療を継続していけるように厚生労働省が「地域医療構想」を進めていくことを決定し、現在各地域で話し合いが進められているところです。

「地域医療構想」は、「医療介護総合確保推進法」に基づき、平成27年4月から都道府県が策定に着手し、平成28年度には作業を終えているとされています。
なお、現在は構想区域(医療法第30条の4第1項第7号)ごとに設置されている「地域医療構想調整会議」において地域医療構想の達成に向け、集中的に検討をしている最中です。

やや堅苦しく書きましたが、要するにそれぞれの地域において、必要とされる医療を質と量の両面から検討し、需要に見合った医療を提供していきましょう、ということです。医療機関及び医師は「高度急性期」もしくは「急性期」の医療を実践したいと考えがちですが、これからは「やりたい医療」ではなく「必要とされる医療」を提供していく必要があります。

少子高齢化に伴い、財源が先細っていく状況において、人口は減少していくものの、当面は高齢者が増加するため、医療需要は増加する見込みです。しかしながら、高齢者は生活習慣病等の慢性的な疾患の割合が高く、慢性期の治療を必要としているわけですが、これまでは医療機関の「急性期志向」もあり、多くが急性期病院の看板を掲げていました。それがもう時代に合わなくなってきたわけです。
さらには、若年人口の減少に伴い、医療従事者も減少していき、必ずしも必要とされる医療が提供できない事態になりつつあります。

おそらく厚生労働省の本音としては、医療機関を機能別(急性期、慢性期等)に集約して(一つの医療機関に複数の機能があっても問題ないとは思いますが)、医療従事者や医療機器等を地域において、効率的に活用していきたいのではないでしょうか。

ただし、経営母体が異なる医療機関をまとめることは地域によっては、一筋縄ではいかないことが容易に想像できます。この議論を有効に進めていくには医療に携わる者だけでなく、もっとしっかり現状を地域住民に発信して地域全体で解決していく、という姿勢が大事になってきます。この記事を読んでいる皆さんもぜひ周囲の人を巻き込んで議論をはじめてください。

執筆者:さすらいの中間管理職事務員
地方の中規模(その地域では大規模)病院にて医事課長として勤務しています。日々、中間管理職としての悲哀を味わいつつ、目まぐるしく変化していく医療制度に置いていかれないよう最低限の自己研鑚に励んでいます。

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