地方の一般急性期病院から見た平成30年度診療報酬改定
地方都市(北の方)で中堅の急性期病院(400床超)において医事課長をしています。コラム第1弾です。
平成30年度診療報酬改定から4か月が過ぎました。ここで個人的に軽く総括してみたいと思います。
今回の改定にあたっては、基本的視点として「地域包括ケアシステムの構築と医療機関の分化・強化」、「新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実」、「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」「効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上」(「平成29年12月13日 中医協総2-1より)が掲げられていました。同時改定となった介護報酬も同じ方向性で改定がなされています。
急激な少子高齢化に対応した診療報酬制度とするべく、それに沿った内容を目指したものとなっていますが、実際のところは診療報酬制度の決定プロセスが妥協の産物ということもあり、必要十分な改定となったかどうかの評価は微妙ではないかと考えています。
急性期を自認している医療機関においては、やはり入院基本料が一番の関心事になっているところですが、7対1入院基本料(本改定から「急性期一般入院料1」)を算定する病院を減らしたいという割には、切り込み不足という印象です。毎回、要件を厳しくしても7対1がそれほど減らない状況が続いていますが、今回の改定でどうなっていくのか、次回の改定内容に大きく関わってくるだけに注意が必要です。
そのため、7対1と10対1の中間として「急性期一般入院料2、3」が新設されましたが、すでに7対1の看護体制を前提に業務を行っている医療機関からすれば、すぐには選択しづらいと思われます。
なお、地域包括ケア病棟及び回復期リハビリテーション病棟については、点数が細分化され、特に地域包括ケア病棟については、「1」と「3」は200床未満の病院のみが届出できるとするなど、病院規模に応じた役割分担が明確になされたと考えています。ただ、「地域包括ケアシステム」そのものの個々の地域における位置づけが曖昧な状況もあり、現実的な場面での在宅や介護との連携の在り方は、イメージしづらいのではないでしょうか。
いずれにしても2025年、そしてそれ以降を見据えた社会の急速な変化に対応するための診療報酬改定が続いていくことと思います。
現実的には困難を伴いますが、できれば対症療法的な内容ではなく、よりマクロの視点で、今後のわが国の人口構造等も踏まえ、先手を打つような総合的な政策を期待したいものです。
執筆:さすらいの中間管理職事務員